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住宅の新築と土地の「セットバック」

2017.02.10

みなさまは、セットバックという言葉をご存知でしょうか?
今回は住宅を新築する際などに注意が必要な、セットバックについてご説明いたします。

■どんな道でも「道路」と呼べるか?

建築基準法は、建築物の敷地は「道路」に2メートル以上接していなければならない(43条)、と定めています。これを「接道義務」と言います。道路に面していない土地には、原則として建物は建てられないのです。
ではその「道路」の定義とは何でしょうか。猫が隠れている路地とか、野原の小径とかいったものも「道路」なのでしょうか。それとも自動車が通行できるくらいのものが「道路」なのでしょうか。

実は、建築基準法はこれについても定めています。42条の条文には「道路」とは「幅員4メートル(特定の区域については6メートル)以上のものをいう」とあります。つまり、幅が4メートルに達しないような狭い道は、法的には「道路」と認められないのです

しかし、我が国には昔から「1間半(2.73m)」とか「2間(3.64m)」とかの幅で道を造ってきた歴史があります。ややこしい経緯が絡んでいるので、なぜそうなったかについての詳しい説明は避けますが、ともかく歴史がある古い町ほど、43条の「道路」の要件を満たさない中途半端な道が残っているわけです。
しかしそのような道沿いにも建物は建っています。現在の基準に合わないからといってそれらを壊してしまうわけにも行きませんから、法は特例でこうした道も道路と見なし(42条2項見なし道路)、現存する建物の存続を認めています。
ただし、災害時の緊急車両の通行の便を考えれば、そうした狭い道路もいずれは規定の幅員4mを満たすことが望まれます。そのため、そうした道路に沿って新築をする場合には、「セットバック(敷地後退)」という操作をしなければなりません。

■どのくらい「セットバック」すればいいの?

「セットバック」とは、端的に言えば「狭い道に面した土地に新築を行う際には、建物が載る敷地の端から道路の中心線までがちょうど2mになるように、あらかじめ土地の形を整えなければならない」ということです。
たとえば3.64m幅の見なし道路に面している土地に新築するのであれば、敷地から道路の中心線までは1.82mしかないわけですから、2m-1.82m=18cmの後退の要が生じることになります。したがって敷地は、建物を建てる部分と、道路の一部に充当する18cm幅の後退部分とに分筆せねばなりません。後退部分は公衆の道路となりますから、名義上は自分の土地であっても、分筆以降はそこに何か建てたり、置いたり、耕作したりすることはできません。
この後退で道路幅は3.82mに広がります。そうしておいて、将来、道路を挟んで向かい側にある敷地で新築をするときに同じ要領で18cmのセットバックを行ってもらえば、結果として4m幅の道路が得られるわけです。

■セットバックは「損」なのか?

おいおい黙って聞いてりゃ、要は先祖代々の土地を削られるってことじゃないか。それじゃ損だから私はセットバックなんかしないぞ、とおっしゃる方がたまにいらっしゃいます。
そんな時、私はこのように申し上げることにしています。

お気持ちは分かります。でも、こう考えてみて下さい。

あなたの家が火事になった時に、道路が狭くて消防車が入れなかったら困りますよね。
あなただって、家の前の道がもっと広かったら何かと便利なのではありませんか。
それに、セットバックが済んだ土地は価値が上がります。十分に広い道路に面して建築もしやすくなりますし、道路環境が整った住みやすい地区ということで世間の印象も良くなり、評価額の上昇が期待できます。
ならば、ほんの18センチばかり削ったとしても、かえって得なのではありませんか。

大体の方には、それで納得していただいているようです。

なお、宮崎市ではセットバック分の土地を市道の一部として市に寄付する場合について、分筆費用等の助成を行う制度を設けています。
この制度を利用したい方は、市道路維持課に申し出て事前協議をしてみて下さい。

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