2016.12.28
住まいの改造を表す言葉は「改築」「増築」「模様替え」で事足りていたはずなのに、いつの間にか英語表記が主流になってしまいました。
今や猫も杓子も「リフォーム」&「リノベーション」。確かによく耳にはするけれど、語感も似ているし横文字だし、その違いはなかなか理解しにくいところです。
よく「ちょっとした改造は『リフォーム』で、大規模にやると『リノベーション』」とシンプルに解釈する人がいますが、あまり正しくありません。
■「量」ではなく、「質」が違う!
元来「renovation」は「刷新」とか「革新」と訳されてきた単語で、「(悪い状態の)是正」「改善」という意味である「reform」とは語義が異なります。
ところが日本で「リノベーション」というと、「建物の改造法の一種」という限定的な意味になります。同じく「リフォーム」は、「衣服や建物の改造全般」というニュアンスで使われます。
つまりリノベーションは建物リフォームの一形態なのですが、建築の世界では両者は時に区別して用いられます。どういうことでしょうか。
結論を申し上げますと、この二つの語は工事の「量」ではなく、工事の「質」や「目的」によって定義が分かれるのです。
リフォームは概ね、修復、更新によって建物を若返らせる工事のことを意味します。それに対してリノベーションは、建物や部屋の性質を変え、新たなライフスタイルの創造を目指す工事のことを意味します。わざわざ英語を使っているのは、格好をつけるためでも人々を煙にまくためでもなく、工事の質の違いを端的に表現するためなのです。
たとえばこういうことです。
1 古くなったシステムキッチンの更新→リフォーム
2 畳部屋をフローリングに変える→リフォーム
3 クロスの張替え→リフォーム
4 DKを隣の和室と一体化させて、広いLDKにする→リノベーション
5 社員寮だった建物を改造してシェアハウスにする→リノベーション
6 古民家を改造して洋食店にする→リノベーション
4の工事は1や2や3の工程も含むことになりますが、単に古い設備を交換するのと、部屋の役割を変える(=暮らしを変える)戦略的な工事とでは、目的と思想に大きな違いがあるわけです。5や6は、建物自体の役割を大胆に変えた例です。
ちなみに躯体を強化して耐震性が高い住宅に改修する工事は、リノベーション(建物の質を変える)でもありリフォーム(筋交いや金具を構造に追加)でもあると言えます。
また、骨組み状態にまで戻して家をほとんど造り直す「スケルトンリフォーム」は、慣習的に「リフォーム」と呼んではいますが、実際にはリノベーションです。工事の内容、目的を考えれば、それは明らかなことです。
お気軽にお問い合わせください。
0985-29-2500